トレンドウォッチ 2018: The Next Five

未来はすでに具現化している

今後5年間、私たちを取り巻く環境はさらに加速します。変化の波は、特定の業界だけに起きているのではなく、すでに多種多様な業界を巻き込みながら、想像を超えた未来を描きはじめています。こうした変化の過程では、様々なイノベーションが生まれ、旧来へのブレークスルーや創造的破壊が起きています。

ブランドは、このように激変する市場へどのように対応すべきでしょうか?一つ確かなことは、市場のポジショニングがダイナミックに変化するという点です。既存の競合だけではなく、市場自体が変革する中で、今までにあり得なかった競合やプレイヤーが台頭することも珍しくありません。

Trend Watch 2018: The Next Five

『いま、ブランドが意識すべき5つのトレンド』が、変化する市場の荒波を航海する皆さまのブランドの羅針盤となれば幸いです。

具現化その1 | デジタライゼーションのその先

ブランディングにおけるパーソナライゼーションは、デジタル化した昨今において新しいパラダイムシフトを迎えました。ブランドは、ソーシャルメディアや自社サイトなど、あらゆるデジタルでのタッチポイントにおいて、統一したブランド体験を設計することが当たり前となりました。ブランド体験を、いかにデジタルの世界で表現するか、という視点が求められています。

ブロックチェーンで変化する信頼

ブロックチェーンとは、ビットコインなどでおなじみの仮想通貨を生成する分散型台帳技術ですが、昨今ブランドの世界においても興味深い現象を起こしています。「信頼」「責任」といったブランディングに不可欠な要素にブロックチェーンを活用することで、興味深い事例が注目されています。

Trend Watch 2018: Blockchain image

例えば、ブランドの中核に“カスタマーサービスの質”と定義するブランドがあります。このブランドは、1年以上リピートするお客様を対象に、送料無料のサービスを考案しました。しかし実装にはクレジットカード会社や運送会社など協力会社との調整、スタッフの教育、業務プロセスの変更など、煩雑な手続きが欠かせません。しかしブロックチェーンの技術を取り入れれば、自社が行う簡単なプロセスでスピーディーに施策を実装することができるようになります。

また、カナダ政府が、合法化された大麻の取引にブロックチェーンを活用した例が挙げられます。詐欺の被害を防ぐなど利用者の安全性を担保することを目的に、取引方法としてブロックチェーンの活用がIBMより提案されました。全取引の記録を可視化する、というブロックチェーンの仕組みを利用することで、ルートから隠蔽性を排除した合法的なマーケットとして、今日市場が順調に成長しています。

Trend Watch 2018: Instagram

AIは、ますます擬人化される

音声を使ったAI(人工知能)の活用が加速する中で、AIの擬人化が注目されています。チャットボットを使ったメッセージングによる会話では、テキストメッセージだけでなく、写真やビデオを送ったり、ウェブサイトやソーシャルメディアを開いたりと、人と会話しているような親近感が生まれるようになりました。さらに、その時のムードに合わせた音楽を選曲してくれたり、行きつけのお店を予約してくれたりと、自分を理解してくれる助っ人として擬人化されたAIデバイスと関係を深める利用者が増えはじめています。

Trend Watch 2018: Amazon Echo

こうした技術の台頭は、ブランドボイス(話し方、トーン、特徴)のあり方に一石を投じています。ブランドの声は男性なのか女性なのか、カジュアルに話すのか敬語で話すのか、性格は積極的に語りかけるタイプなのか聞き上手なのか。

AIとの会話が人間同士のコミュニケーションに近くなるほど、ブランドボイスの設定が、ブランドとお客様との関係構築にますます重要となっていきます。

具現化その2 | 台頭する「マーチャント・テクノクラート」

昨今小売業界でのシフトチェンジは加速しています。今後小売ブランドは、「マーチャント(小売業)・テクノクラート(技術理解者)」への移行が求められています。

何もかもがオンデマンド

foodpanda India TVC - Delivery Boy

「欲しい物を欲しい時に、今この場で手に入れたい」と考える今の消費者は、その時感じた「欲しい」のニーズを満たすためなら、購買するブランドを変えることもいといません。オンデマンドの概念はいまや小売では当たり前であり、よりタイムリーでワンストップとなることがショッピング体験に求められています。フードデリバリー業界( G r u b h u b 、D e l i v e r o o 、Fo o d p a n d a 等)や金融サービス(テンペイ、バークレイズ、Ve n m o 等)、そしてS NS上での広告媒体(Facebook、Twitter、Pinterest等)においても日進月歩のイノベーションが続いています。

広がるブランド体験

VR(拡張現実)などの技術革新により、ブランドはこれまで以上に双方向で深いブランド体験が提供できるようになりました。テスラ・モーターズの新車をVRで試乗したり、部屋を汚すことなくリビングの壁を変えたりと枚挙にいとまがありません。WebVRのような新しい技術を利用すれ ば、パソコンのブラウザで欲しい製品をあらゆる角度から

「手に取る」ことができるようなった今日、ショッピング体験のバーチャル化は加速する一方です。店舗を構える小売ブランドは、店舗スペースを「販売」の場所と捉えるだけでなく、新たなブランド体験の場として活用する方法を模索していくことが必要となります。

具体的な事例として、IKEA(イケア)が提供する『IKEA Place』アプリでは、気に入った家具を自分の家に置いたレイアウトをプレビューで“トライアル”することができます。美容業界では、ロレアルが『Makeup  Genius(メイクアップジーニアス)』というアプリで、口紅やアイシャドーなどをバーチャルで試すサービスを提供しています。

ハイパー・パーソナライゼーション

予測分析、3Dプリンティング、リアルタイム・フィードバック、機械学習、DNA鑑定。こうした新しい技術により、ブランドはプロダクトのパーソナライゼーションを進化させています。プロダクトのカスタマイゼーションの幅が、より多く微細に可能となったことで、成功している小売ブランドやウェブサービスは、多様化した個人の嗜好とマッチしたカスタムサービスを提案することで、販売のチャンスを飛躍させています。

Trend Watch 2018: Vans

例えば、スニーカーのVansは、15分でカスタムデザインできるスニーカーを提供しています。キャンベル・スープが売り出したゲームは、顧客のDNAデータを使って個人に合わせた食事のアドバイスやお勧めの味を提案してくれます。SpotifyやPandoraは、機械学習やアルゴリズムを活用し、リスナーの好みに基づいたプレイリストをレコメンドしてくれます。こうしたパーソナライゼーションの波は今後さらに加速するでしょう。

具現化その3 | スマートパッケージとスマートプロダクト

製造や素材の技術は日々進化し、それに伴い、商品の製法や見せ方も大きく変わり始めています。こうしたトレンドの中、パッケージの役割もシフトしています。

能動的な、スマートパッケージ

パッケージとは商品の梱包という役割ではなく、私たちの毎日をさらに快適にする役目をも担い始めています。例えば、たくさんの薬を常時服用する患者さんにとって、薬の管理は大変な作業です。そこに着目した製薬会社では、薬のパッケージに患者さんの服用時間や薬の量をインプットし、知らせるという機能に加え、服用を忘れるとかかりつけの医師にアラートを送る容器の開発を進めています。昨今急増する長期的な薬の服用者や高齢化社会において、このような研究は医療業界で大きな注目を集めています

Trend Watch 2018: Food

パッケージ製造の長い歴史を持つPalladio Group社の『PhutureMed』というスマートパッケージの取り組みでは、PTP包装シート(錠剤やカプセルをプラスチックとアルミで挟んだシート状のもの)に電子インクで印刷を施し、錠剤が包装から押し出されると、リンクされているデバイスに記録とアラートが送られる仕組みを考案しました。こうしたスマートパッケージは便利であることはもちろん、時には命を救うことさえあります。

食品業界におけるスマートパッケージでは、食品の鮮度をモニターするだけではなく、お弁当の賞味期限を知らせたり、果物がちょうど食べごろになった時期を知らせたりする機能が搭載されています。こうした機能は、消費者に食の安全を提供するだけではなく、生産者側であるブランドにも、消費量を把握すると同時に食品のムダを防ぐ貴重な機会となります。

ごみゼロ・パッケージ

そもそも、パッケージそのものが無駄だという考え方もあります。ブランド側にとっても、パッケージがなければゴミを減少させることができるだけではなく、製品である食品が直に目に見える訴求効果や、包装のための素材や印刷のコストを削減できるなど多くのメリットが得られます。

Trend Watch 2018: Ooho Water Blobs

「Ooho」という球状の“食べられる水”は画期的なアイディアです。プラスチックボトルやカップの代わりに使う液体の容器には、海藻エキスで作られた無味無臭の持続可能な梱包材を利用してます。ペットボトルの代わりに携帯し、風船ごと食べてしまえば、ゴミは残りません。

Trend Watch 2018: Tomorrow Machine Olive Oil

デザイン会社のTomorrow Machineもまたごみゼロパッケージに取り組んでいます。卵の殻のように割って使う飴と蜜蝋性のオリーブオイル容器や、みかんのようにむいて開ける蜜蝋性のお米パックなど、機能的かつエコなパッケージのデザインを手がけています。

進化するスマート家電やスマートホーム

スマート化が進んでいるのはパッケージだけではありません。電化製品など、あらゆる製品も機械学習によりスマート化が加速しています。例えば、LGの「SmartThinQ」をプラットフォームとしたスマート家電は、Google  Assistant やAmazon Alexa、またはスマートフォンと連動させたりができる優れた家電が在庫を判断し自動で購入する機能を提供しています。同シリーズの冷蔵庫では、来客がある日は多めに氷を作ったり、牛乳が切れそうになるタイミングにネットで注文を完了させたり、といった優れた冷蔵庫です。

Trend Watch 2018: Nest Thermostat

スマート・サーモスタット( セントラル室温調整機)のNESTは、ユーザー世帯の生活パターンを把握し、快適な室温を保ちながら節電を自動で行います。NESTは自らが学習するため、マニュアルで設定を変えるほどセンシティブな設定機能が低下してしまう、という特徴を持っています。家族間のエアコン戦争が防げる、一石二鳥の役割も担ってくれそうです

具現化その4 | 交通革命

今日の公共交通といえば、電車、バス、タクシーですが、新しいモビリティの登場により、交通手段の考え方も一変しそうです。

共有モビリティ

これまでの代表的な移動手段が公共交通であるならば、これからは「シェア交通」がメジャーとなることが期待されています。日本では白タク規制に阻まれているUberですが、世界では移動手段として定着しています。その波は自動車だけではなく、今後は自転車やバイクへも波及し、プライベートジェットさえも共有される時代に突入しました。

Trend Watch 2018: Bicycles in China

一方で中国では、シェア自転車の放置駐輪や乗り捨てが都市で大混乱をおこす事態に発展し、行政の協力が不可欠という課題が上がっています。

航空会社では、空席が多い便を各社でシェアし、飛行機の満席・空席状況を効率的に利用する方法を模索し始めています。ビジネス利用者を対象としたアプリケーションの開発などが行われています。

定期購買が販売の切り札に

車の所有が減少しカーシェアリングが世界で拡大していく中、自動車会社は、販売を基軸にしたカスタマーリレーションから脱却し、長期的にサービスを販売する「定期購買」ビジネスへ転換する道が問われています。

2018 Trend Watch: Car Interior

シェアリングが進む世の中で選ばれるブランドとなるためには、「利便性」「お得感」「すぐに使える」「清潔さ」といった点が求められています。乗るたびにブランドを選ぶカーシェアビジネスが拡大する中、自社のブランドへ愛着を持ってリピートする顧客を増やすことは、車の販売顧客を増やす以上に重要となっていきます。

自動運転の衝撃

Waymo's fully self-driving cars are here

2020年以降、自動運転が日常になると言われています。それにより既存のインフラも変わることが予測されます。政府の収入源となっているスピード違反や、駐車違反の罰金は減少する一方、保険会社は自動運転に対応した商品の発売が急務となります。都市計画においては、駐車場の数よりも、電気自動車のチャージステーションを増やすといった視点が求められていきます。また、これまで新幹線や飛行機を活用してきたビジネスパーソンも、自動運転車を動くプライベートオフィスにすることで公共交通を利用する機会が減少していくことも予測されています。

具現化その5 | ブランドの社会的意義

今日ブランドは、消費者が求める商品やサービスを提供する以上に、そのブランドが与える社会的な意義が求められています。事業の透明性や説明責任への要求が増す中、収益をあげるだけでなく、社員やコミュニティー、そして地球へ還元できる在り方が、未来のビジネスに求められていくでしょう。

CSRのその先へ

ブランドは、形だけのCSR活動という表面上の社会貢献ではなく、社会やコミュニティーへどのような役割を担うかといった、一貫したブランドの姿勢が求められるようになりました。私たち消費者は、そのブランドが持つ社会的役割に共鳴する意志表示としてサービスや商品を購入するという構図ができあがりつつあります。

Trend Watch 2018: Stella McCartney

エコフレンドリーとラグジュアリーを両立させるブランド、Stella   McCartneyでは、ビニール、ポリエステル、革などの環境に悪影響を及ぼす素材はブランドの存在意義に反するとして一切使用していません。

SpaceXもまた、社会貢献をブランドの中核に捉えている企業です。今までは打ち上げる度に使い捨てされていたロケットを回収し、再利用する取り組みを始めました。こうしたイニシアティブは、宇宙でのゴミ問題に一石を投じています。

ビジネスの透明性

良くも悪くも、ネット普及により企業活動の透明性は増しました。消費者は、食品の原材料の生産者の顔写真から、購入するパソコンの製造における労働の実態まで調べることができるようになりました。また、ソーシャルメディアを通じて、商品やサービスに対してリアルタイムで意見を述べたり、問い合わせに即時に返信をもとめたり、などといったブランドからのレスポンスを当然として求めるようになりました。

How to ride an Ola Share like a Boss!

 

こうした流れの中、オンライン・レビューは不可欠な機能ですが、レビューや透明性を主体としたサービス(Yelp、食べログやトリップアドバイザー等)や、レビューにより信頼性を得て購買に繋げるビジネスモデル(Uber、Ola、Didi、Chuxing、Amazon、Google  Maps*)は、継続的に成長しています。

化粧品メーカーのヴェレダや、ファッションオンラインショップEverlaneにとって、透明性は彼らの代名詞とも言えるでしょう。「徹底された透明性」を提唱するEverlane では、サイトで売られている全商品に対し、製造された工場の写真、素材費、設備費、運送費、人件費、税金などの詳細なコストの内訳を公表するなど、徹底した姿勢を示しています。

個人レベルでの意識の高まり

社会貢献や透明性に対して意識が高くなっているのは企業だけではありません。個人レベルでも、毎日の生活の中で、食事、運動、ストレスマネージメント、ワークライフバランスなどに気を使い、心身ともに健康的な生活を目指す姿が主流になり始めています。ミレニアル世代はこうした傾向が特に顕著で、モノより体験を重視し、常に新しい冒険や表現、解放を求めると言われています。

Trend Watch 2018: Classpass yoga

この「冒険カテゴリー」に参戦する企業が増えています。例えば、Under30Experiencesは世界各国への冒険旅行を企画するミレニアル専門の旅行会社です。アメリカのフィットネス専門会社ClassPassは、ジムに会員を縛り付 けるのではなく、個別で経営されている専門クラスをネットワーク化し、月額で利用できるシステムを提供しています。会員はアロマヨガなどのリラックス系からボクシングなどハードな運動まで、幅広い専門性を持つインストラクターからクラスを体験できます。

イギリスのWilloughby Book Clubはカスタム登録した好みに合わせて毎月新しい本を届けてくれるサービスです。家にいながら知的好奇心を満たすのもまた至極な冒険ではないでしょうか。

Get ready

#TheNext5 いかがでしたでしょうか?  これら五つのカテゴリーのシフトはこれから訪れる時代の<事象化> を紹介しました。

めまぐるしい変化の中で、生き残るブランドは進化し続けています。

変化を脅威と捉えるか、千載一遇のチャンスとし、今までのルールやこだわりに縛られずにゲームチェンジャーとなるか。二つに一つなのであれば、新しい時代を 作る道を自らが選んで進んで行きましょう。

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