夏のサーブから世界的な熱狂を巻き起こす
全豪オープンは伝統を誇る大会です。しかし、その革新的な精神に見合ったブランドを作るには、デザインの刷新が必要でした。私たちが目指したのは、スポーツ界を牽引するその唯一無二の存在感を表現しながらも、テニスの試合以上の何かを求める国内と世界中のオーディエンスに向けて、その魅力をより現代的に、より広く発信できるブランドデザインでした。
ゲームチェンジャー
伝統が染み付いた他のグランドスラムの大会と比べると、全豪オープンは多くの「初」を取り入れてきた大会と言えます。初めて開閉式の屋根が付いたスタジアムを導入したのも、新たな試合形式を取り入れたのも全豪オープンです。そして、同一賃金の導入で他を先導した大会のひとつでもあります。
こうした歴史を基に「ゲームチェンジャー」というブランド戦略が誕生しました。今の時代に合った大会のあり方、つまり、常に変化し、適応し、そして刷新を繰り返していく姿をブランドデザインに表現するのです。
特別なコートにふさわしいロゴ
私たちは、全豪オープンに宿るこのエネルギーを凝縮させて、大胆かつ柔軟なブランドアイデンティティを生み出しました。はじめに取り掛かったのは「AO」というブランド名とロゴです。伝統的な大会とは一線を画すモダンな大会のイメージが見事に表現されています。
このまったく新しいロゴは、オンラインから大会会場のアクティビティまで、さまざまな場面に登場しました。テニスだけでなく、音楽、食べ物などにも使用され、全豪オープンはイベントが終わった後も長い間語り継がれる特別な大会となったのです。
ベースラインのその先に
こうして、3週間のスポーツイベントは、年間を通して人々に愛され続け、未来へと続いていくエンターテインメントブランドとして新たなスタートを切りました。
数年後、Landorチームはブランドをさらに進化させるため、キャンペーン内でのブランド表現を刷新しました。新たなメッセージを組み込んだキャペーンを作成し、グラフィック要素を改善することで、「ゲームチェンジャー」の精神に命を吹き込んだのです。
グランドスラム級の成果
「ゲームチェンジャー」は驚くような成果をもたらしただけではなく、試合の流れを完全に変えることになりました。ブランドを刷新した最初の年には、最多記録となる75万人の観客を動員し、ソーシャルメディアでのエンゲージメントが6%上昇し、ファンの人数は450万人に到達しました。AOのロゴが付いたグッズは5年間で初めて完売し、AOのビデオスクリーン画像は、大会全体を通して2番目に多くInstagramで投稿されました。それも、かのロジャー・フェデラー選手の画像に次ぐ2番目というから驚きです。
革新と未来を見据えたアプローチをとった「ゲームチェンジャー」キャンペーンは、伝統的なスポーツブランドの壁を打ち破りました。全豪オープンはコートの中でも外でもスポーツ界を牽引する存在となり、今の時代に合ったグランドスラムのひとつとして、その地位を確かなものとしたのです。